景気回復にはクレジットカードポイントが有効

クレジットカードのポイント活用政策で景気回復

私はかつて多くの金融資産の証券化を手がけてきた。その多くは、クレジットカードの割賦債権や貸付金資産である。そこで、このような個人の消費に基づく金融資産の拡大が、最も消費を促し景気を拡大させる近道ではないかと考えてきた。たまたま、当時から付き合いのあった企業トップと景気回復策について議論をするうちに、韓国が1997年のアジア通貨危機後の経済的破綻状況から立ち直った際の消費刺激策について話をうかがった。99年に韓国政府が導入した「クレジットカード奨励策」である。

 

当時、不況のなかにいた韓国政府は、クレジットカードで決済した金額にうまみをつけたのである。個人に対しては、年間給与額の10%(01年からは20%に引き上げ)を超過する分について、超過金額の10%を所得控除(上限300万リ=約30万円、実施時の換算レートで計算、以下同)し、同時にクレジットカード売上伝票1枚当たり1回の抽選機会をつけた宝くじを導入し、現金還付を行った。

 

また、加盟店(実際に物品を販売する業者や店舗)については、01年よ総売上金額の2%相当金額(上限500万リ=約50万円)の付加価値税(いわゆる消費税)支払額から税額控除できる制度も導入した。その結果を示したのが、表である。民間消費支出の拡大によって企業収益が改善し、その結果、名目賃金が上昇し、失業率の低下が顕著に見られる。もちろん、銀行の不良債権処理などが相乗効果を生んだことも確かだろうが、民間支出に占めるクレジットカード取扱高が制度導入後5年間で大幅に増加したことは間違いない。それによって現金決済による不正取引や売り上げのごまかしなどができなくなったことも大きな効果といえよう。

 

企業トップの話をうかがい、この「韓国モデル」を日本でも応用できるのではないかと考えるようになった。その企業トップは「ライフーアシストーポイント制度」として考えをまとめてくれ、それに私自身の改良を重ねた消費刺激策をここに紹介したい。クレジットカードを利用した支出に幅広くポイントを付与し、個人に還元することで、消費を促す。ここで、クレジットカードをその媒介として使用するのは、既に日本国民のうち約8500万人が保有しているからである。

 

では、この制度によってどの程度の効果が得られるだろうか。韓国のような急激な効果は期待できないにしても、現在のカード利用額約40兆円(09年度概算)が25%(10兆円)純増したと仮定すると、それだけで民間消費3・3%の押し上げ効果となり、GDP成長率は約2%が期待できる。

 

これによって得られる税収は、消費税が10兆円の5%で5000億円、法人税が10兆円の税引き前利益が15%として、法人税率40%をかけて6000億円の合計1兆1000億円。これに対し、ポイント付与を5%としているのでその費用は、5%の消費税と同額となるので、差し引き6000億円の増収という結果になる。加えて、企業業績が回復することによる失業率の低下や脱税行為の防止などを考えると、その効果はさらに大きい。

 

ただし、いくつか解決しなければならない問題もある。まず、韓国でも問題となった、いわゆる多重債務者問題である。韓国では、消費に走るがあまy支払い能力を超えた買い物をする個人が増えてしまった。日本では、既に割賦販売法の改正によって、個人への与信の総力規制が導入されていることから、この問題は韓国ほど深刻ではないと考えられるが、「買い物依存症」対策は重要である。そのためには、現在ある金融情報機関の充実や正確な顧客情報の共
有とカードホルダーへの利用上限額設定が必須である。

 

一方、昨今増加している商品現金化業者やポイントを増やすための架空売上業者などを排除することは罰則も含め検討しなければならない。また、小売業者への公平性のためにも、零細小売業者などクレジットカード端末を所有していない小売業者を加盟店にするためのCAT端末設置(カード使用者の信用照会のための端末機=Credit AuthorizationTerminal)などについては、政府のサポートが必要である。

 

ちなみに、97年4月の消費税増税(税率3%から5%に)前の小売業の売上高を見てみると、前年同期比1兆6160億円、12%増(97年3月)であったのに対し、導入後1年たった98年3月には同マイナス2兆1000億円(14%減)と消費意欲は明らかに低下した。当時、深刻化した金融危機の影響もあったが、消費税の増税は消費意欲と密接に関係していることは間違いない。だからこそ、消費意欲を高め、失業率の低下とGDP成長率の上昇を同時に実現できる策が欠かせないと考える。